おはようございます。6月の日本は涼しいですね。インドネシアでこの3年間、年中ポロシャツ姿で過ごしてきた身としては、けっこう肌寒く感じます。
やや夜型の生活になっているなか、目覚めてMITのMBA事務局からのメッセージをSlackでチェックすると、こんな内容が届いていました。
6月のオリエンテーションは終了! 来週から講義が始まるのを前に、リラックスとエナジーチャージをしてね。SFMBA(スローン・フェロー・MBA=プログラムの名前)のサングラスを付けてセルフィーを撮ろう! ビーチや山々などプリティーな景観を背にしたら、ボーナスポイント。良い週末を!
それに続いて、同級生たちがギリシャやシンガポールのビーチ、アメリカ・ノースカロライナ州の森などで、サングラスをかけて笑顔の写真をアップしていました。
私が入学したのはミッドキャリア向けのMBAで、同級生たちの平均年齢は38歳。社会人経験も平均14年あります。そんないい歳をした大人が一体これは、何をやって(やらされて)いるのか? それにSFMBAサングラスって何でしょう。
実は6月のオリエンテーションが始まる前、MITから自宅に小包が届いていました。
この箱を世界各地にアメリカから送るだけで、一体いくらの配送料がかかっているの……。ジャカルタで駐在事務所の会計もやっていた私は、中身よりもそんなことが、まず気になってしまいました。
ふたを開けると、中身は「MIT MANAGEMENT SLOAN FELLOWS MBA」のロゴが入ったマスク、ビーチボール、お手玉、風船、パズル、小旗、ステッカー、ミニホワイトボード、そしてサングラスでした。
一見して、小さい子供向け……。
どういうこと?
同じく私費で留学する同級生に連絡すると、ぼやき声が聞こえてきました。
こんなことにお金使ってるから、授業料がバカ高いんですよ……。ちょっと頭に来て、すぐゴミ箱に放り込みました。ただ、事務局から「あとで使います」ってメッセージが来てたから、慌てて取り出しました。
SFMBAは、通常2年間のMBAを職場復帰が早いことを望むミッドキャリア向けに1年間にギュッと圧縮したプログラム。授業料も2年制の約2倍で、教材費や生活費などを入れると、1年間にかかる資金「19万2,443ドル」を学生は用意しなければ入学できません。日本円でざっと2,100万円です。正気か……。
超高額のため、「コスパが割に合わない」という声も多いのですが、学生たちは社費組を除いて、学生ローンを組んだり、貯金を取り崩したりして参加しています。
この同級生も、これまで働いてコツコツ貯めた全財産を投資しているのです。そんななか「子どもだまし」のようなノベルティグッズを受け取って、ちょっとイラッとした気持ちは、私も共感できます。
さて、このグッズ。小さい子供を持つ同級生たちは、子供にあげて遊んでいる様子を写メに撮ってアップしていましたが、事務局からは「あとで使います」とのことでした。3日間のオリエンテーションで、事務局から出された指令がこんな感じです。
DAY1:今の気持ちをホワイトボードに書いてセルフィー
DAY2:マスク姿で屋外でセルフィー。あなたが世界のどこにいるか教えて!
DAY3:これまでのところ、SFMBAコミュニティのどこにLOVEかシェアして
上の写真で、私がホワイトボードに書いているのがDAY1の課題です。
大学マスコットのビーバーのイラスト付きで、初日を終えた気持ちを記しました。
The Start of A New Journey. Super excited! (新しい旅の始まり。大興奮!)
世界41カ国から今年は138人参加のプログラムです。アフリカ、欧州、オセアニア、アジア、アメリカと、各地で撮られたセルフィー写真が続々と上がり、それをスクロールしていくだけで、ワクワクした気持ちになってきました。
小包を一度はゴミ箱に放り込んだ同級生も、グラサン姿で満面の笑みを浮かべた写真をアップしていました。ほほえましかったです。
オリエンの最後のセッションでは、ロゴ入りの風船を膨らませて、Zoomの画面越しに、これから始まる船出をみんなで祝福しました。
◇
新型コロナウイルスの影響がなければ、例年は今ごろ、キャンパスで顔合わせをして互いに自己紹介をしている時期です。それが昨年と今年はかなわず、夏学期は実際に顔を合わせることがないまま、オンライン講義が来週から連日あります。課題をチームで取り組むことも多いなか、互いの距離感が手探りで、難しいところもあります。
その潤滑油になるようにと事務局が用意したのが、このノベルティグッズ。
いい大人がノリ良く、はしゃいでいるだけです。ただ、オリエンを終えて、私たち同級生の仲や雰囲気は始まる前より、ずいぶんと良くなりました。
MBAのビジネススクールのなかには、講義の下位数パーセントを落第させる競争的な学校もあります。一方、MITのSFMBAは、一つのモットーを掲げています。
No Fellow left behind (同級生を誰ひとり置き去りにしない)
そのモットーを1人ひとりに感じさせてくれる粋な小包でした。
DAY3の課題「これまでのところ、SFMBAコミュニティのどこにLOVEかシェアして」に、筆者がプログラムのSlackに投稿したメッセージとイラスト。
日曜日の朝、ほっこりできるレターありがとうございます。
MITらしくないグッズの内容に、お友達に共感しましたが、読み終えてみると、MITだからこその贈り物だったことがわかりました。”らしくない”ものだからこそ、世界中のまだ遠い同級生が笑顔で自分をナチュラルに表現できて、そこに共感が広がりそう。
難しいプロフィールを書き連ねるよりも、その1枚の写真の方が人となりが伝わってきそうです。コミュニケーションのヒントを頂きました。さすが、MIT様ですね。
「The Start of A New Journey. Super excited! 」
おめでとうございます!Bon Voyage!!