おはようございます。はやいもので、2021年も半分終わり。夏が近いですね。
6月から始まったMIT(マサチューセッツ工科大学院)のスローンフェローMBA(経営学修士)も、5週目に入ります。クラスメートとの間で、いま、もっぱら話題なのは、9月から始まる秋学期の選択授業をどのように選ぶか、です。
Bidding(競争入札)で1000ポイントを付与されており、自分がどうしても取りたい講義には多めに点数を入れて、「競り落とす」必要があります。
もっとも知りたい情報は、「最低いくら入れれば落とせるか」ですが、これは非公開。また、各自で指し値を入れるので、魚市場のように、隣のおっちゃんがいくらで「買おう」としているかも、うかがいしれません。
代わりに、「昨年に定員いっぱいになった講義」「学生の評価」などが公開されており、そうした情報を手元に講義の選択と点数の配分を考えます。
日々の仕事には縁遠い話題です。ただ、いざ「選択」をはじめると、心に迷いが生まれました。今日は私の迷いを追体験してもらいながら、自分の「強み」と「弱み」のどちらを伸ばすべき?という葛藤へのヒントを考えたいと思います。
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選択科目から何をどう選ぶのか。
これは、「自分がどういうスキルについて、半年後に成長していたいか」という心の願望そのものです。
ある同級生は、ビジネスアナリティクスのサーティフィケート(コース履修証明書)を狙うといいます。また別の友人は、「これを機にファイナンスを強化したい」といいます。「アントレ(起業)一本で攻める」と語る仲間もいます。
そういう声を耳にすると、迷います。
あれ、自分はその分野、触らなくて大丈夫かな?
以前に取り上げた「FOMO」(見逃しの恐れ)を、だれもが感じるものです。
今回、私はこのFOMOを防ぐために一つの防波堤を建てました。
グロービス単科とMITの必修コア科目の受講から、心に誓ったことです。
数字を使う勉強は必要最低限のコア(必修)で終わらせよう
私にとっては、ビジネスアナリティクス(定量分析)やアカウンティング、ファイナンス、経済学などです。
逃げの戦略ともいえます。ただ、徹夜しても、得意な人の足元にも及ばないことが、この1年間、1カ月で、はっきりわかりました。彼・彼女たちが50分で解ける問題が、私には5時間かかります。
得意な人は数式が出ればワクワクと盛り上がると聞きました。また、エクセルで財務諸表をみたら、すぐ、あれこれいじりたくなるそうです。
私は逆に、ノートパソコンのモニターをパタンと、しめたくなります。そして「だれかまとめて、ポイントをレクチャーしてくれないかな」と、つい考えてしまいます。
MITは理系の大学で、アナリティクス系の教授・科目が充実しており、隣のハーバードからクロスレジスター(越境履修)をする人もいるほど。そんな話を耳にすると、心も揺れます。
ただ、選択科目で深追いしません。必修のコア科目はしっかりと理解して、そこで防波堤にて、せき止めたいとおもいます。
そのうえで、こう考えました
「日本でなかなか学ぶ機会がない、アメリカ式のリーダーシップとアントレ(起業)を中心に学ぼう」と。
そうして科目を選んでいくと、さっきとは違う迷いも出てきました。
リーダーシップやアントレマインドといったソフトなスキルもいいけど、ハードスキルも大事なんじゃない?
ある日本人の卒業生は、私にこう助言してくれました。
40歳前後で、ハードスキルを磨ける最後のチャンスとも言えます。ぜひ関心があるなら、挑戦してほしい。
これも正論です。
正直、どうして良いか、わからなくなりました。
この1カ月、付き添ってくれたMITのコーチ、クリスに、たずねました。
「クリスさん、私の興味はソフトスキルにあるのだけど、ハードスキルも伸ばせるなら伸ばしたいし、捨てがたい。どう考えますか?」
初老の女性クリスは、「ふむ」というような相づちをうち、こんな一言から入りました。
それは永遠のジレンマだね
クリスはそうして、静かに言葉をつぎました。
まず、いま起きている事実、得意とは言えない科目があるといった事実を受け入れること。そのうえで、他のことに集中しましょう。あなたが至らなくても、必要とする領域は、必ずサポートする人間が現れます。そうした人間と、どう付き合い、時にリードし、またそこに自分の良さを発揮できるか。グループディスカッションと一緒です。
グループディスカッションをみていると、あなたは他のメンバーの発言をうまく要約したり、そこに独自の見解を入れたりと、ユニークな声をもっています。心配することはない。
こう文字にすると、当たり前のことしか言っていません。
ただ、「この前に葬式にいったら、最も年配なのが自分で、人生の終え方を考えた」と、ちゃめっ気たっぷりに話すクリスがいうと、違って聞こえるのはなぜでしょう。
同じグループの同級生の一言を思い出しました。
彼はアナリティクス系がめっぽう得意で、「わからないことがあったら聞いて」と、グループワークでも率先して分析をする男です。
あるとき、私が「足をひっぱって申し訳ないね」と言うと、彼は「ノー、ノー」と首を振って、こう返しました。
ヒデ、マーケティング経営戦略のクラスで、ああやって君が積極的に手を挙げて発言する姿に、ぼくは内心、とても刺激を受けているよ。ぼくは苦手で、考えもまとまらず、実はあの授業で一度も、手を挙げられていないんだ。
これは意外な告白でした。
自分が得意と感じることを伸ばすのか、不得意で苦手意識をもっているところにあえて挑戦して伸ばすのか。
この選択は本人次第であり、タイミングの問題もあるかと思います。ただ、この結論はもうずいぶん前から出ているのかもしれません。
選択科目の熟考を通じて、自分の生きる道にも、少し火がともった気がします。
スポーツでも全く同じですよね!
①選手として試合に出るには強みを伸ばすのか、弱みをカバーするのか、どんな試合で自分が生きるのか。
②名選手と名監督は全く違うスキルが求められる。
選手としての価値を高めながら監督のスキルも手に入れようとするのがMBAだとしたら、その二つの解法は全く別。分けて手段を整理しないと、conflicting conclusionで答えは出ないですねー。
と野上さんのレター読んで考え整理できました。有難うございます!
お疲れ様です。
選択科目は「心の願望」ですかぁ。もう気持ちは固まりつつあるようですが、でも迷いますよね。18年間一つの世界の最前線にいらして、急に解き放たれたわけですから、FOMAに陥って当然だと思います。そして、のがさんの性格なら全てを完璧にやらなければ気が済まないでしょう。ただ、20代や30代前半とは違う40歳という地点に立った時、これまでのキャリアの活かし方も無視はできないですしね。お得意のマーケティングで、外部環境から内部環境分析とやられてはいかがでしょう(笑)、どうやって勝ちにいくか。意外と、自社の本当の強みには気づいていなものなんですよね~。
私はポジティブに諦めるという意識を取り入れるようしました。やらないわけではなく、そこに1kgだけ足してちょっとだけ負荷はかける。嫌いなものは苦痛でしかないですし、好きでナチュラルにやっている人には敵いません。すべて100%はやはり無理。でも、好きな事には、自分も何歳になっても寝食忘れて向き合えます。逆に私が得意なことを、だれもが出来てしまったら、ちょっと困りますしね。
そして、どんなことも常に進化しています。一時期できたとしても、その道でやり続けない限りは風化していきます。私がワインの知識を持っていると言っても、数日テイスティングをさぼれば感覚は鈍りますし、一年間仕事から離れれば、もう浦島太郎でしょう。
この1年で他者から気づかされたように、きっと、のがさんにはまだまだ見えていないご自身の強みがありそうですね。
さて、1年間のグロービス生活、そして1ヶ月のハイブリッド受講、本当にお疲れ様でした‼MITで更にパワーアップされた姿を、楽しみにしております。