きょうの話題は、「Enhancing Your Virtual Presence」(バーチャル講義・会議での存在感アップ法)。実はこのセッションにはあまり期待せず、Newsletterの執筆を内職しようとしていました。みなさんも、発言機会のなさそうな会議や、何となく受けたセミナー・講義で、はじめから消極的姿勢を決め込んでいることがありませんか?
現れた講師のロブ。パリっとした青いYシャツ姿で、白髪に丁寧にクシが入っているのがわかります。冒頭に、こう問いかけけてきました。
What % present are you right now?
(あなたはいま何%、ここに存在していますか?=どれぐらい心がここにある?)
What is keeping you from being here 100%?
(あなたが100%ここにいることを妨げているものは何ですか?
What is keeping you inspire while working remotely?
(リモート参加しているときに刺激を与え続けているものは何ですか?)
こう問われて、焦ったのは私だけではなかったようです。文字どおり襟を正したり、座り直したりしているクラスメートがちらほら、ギャラリービューで見えました。
ロブからは、この問いをブレイクルームで話し合うように言われました。
パリからの同級生は、「プレゼンス(存在感)は90%ぐらい」と話します。マイナス10%の理由は、始まった夏学期の課題(ToDoリスト)が多すぎて、来週の講義開始までに準備を終えられるか、気がかりだといいます。
イタリアの同級生は、少し落ち着かない様子。「朝からアパートで工事してて、ごめんな、うるさいやろ? エアコンも効かへんし、ブルートゥースのヘッドフォンを買ったんやけど、これ接続が悪くて使えへんねん……」
私は「ごめん、さっきまで別のこと考えてたんやけど、3人だけのブレイクルームに放り込まれたら、プレゼンス(存在感)がいやがおうでも95%ぐらいに上がるわ」と笑いながら打ち明けました。
他の用事を抱えたまま参加している、
PC周りの環境がそもそも良くない
参加者の多さなどから傍観者を決めている
例示した3つとも、誰もが経験としてあるのではないでしょうか。
こうした声を引き取ったロブは、「プレゼンス(存在感)は自らの選択だ」と強調します。
つまり、誰かが私の存在感や心のあり方を左右するものではない。講義や会議、スピーカーが私を消極的にさせているのではなく、私自身の選択である。プレゼンスを90%から100%に近づけるのも、10%の心あらずになるのも、わたし次第なのだと。
当たり前の理屈なのですが、私はロブの話に聴き入るようになっていました。
◇
MITのビジネススクールはリーダーシップ教育を柱に掲げています。
ロブは、「大好きだ」と話すハーバード・ビジネススクール(HBS)の教授による一節を引用しました。日本語に訳すのが難しいですが、紹介します。
Leadership is about how someone else experiences themselves in your presence.
(リーダーシップとは、他者があなたと共に存在するのを感じられるかである)
その準備はできているか? Zoomの臨み方ひとつとってみても、一事が万事だよ。
そう投げかけているように、私はとらえました。
リーダーの立ち位置でなくても、誰もが「他者に私の存在を認めてほしい」「わたしの話を聞いてほしい」と、心の中で多かれ少なかれ思っているでしょう。
一方、わたし自身は、画面越しで、どんな様子の人たちに話しかけたいと思うでしょうか。どんな人や態度と、自らの存在を共有したいでしょう。
答えは明白ですね。
そして、どうすればzoomなどのオンライン会議でプレゼンス(存在感)を高められるか。ロブは、こう付け加えました。
Allow another to connect with you.(相手があなたとつながれるようにしなさい)
今日のDAY3は、オリエンテーションの最終日でした。来週から講義が始まるのですが、渡米は8月中旬で、しばらくはZoomを使ったオンラインによる受講が続きます。
「ロブの教え」から、私も受講の態度を少し改善や工夫してみようと思います。
皆さんも週末や次回のオンライン会議や講義で、ぜひ参考にしてみてください。
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編集後記(読者のみなさんへ)
6/1から静かに始めたNewsletterですが、きょうは周囲に少し告知しました。コメントもいただいて、「読まれている感」が高まっています。迷惑メールに放り込まれないように、毎日、新鮮なネタを仕入れ、調理して届けたいと思います。
お疲れ様です。
ドキッとするお話でした。オンライン授業の魅力に引き込まれたグロービス、でも100%常に存在できているかと言えば…。のがさんに、「自身がどれだけコミットするかだから、頑張って!」とよく励まされたことを思い出します。
最近は難易度も上がり、科目数も増え、なかなか思うように存在できていません。これをきっかけに、この週末からは気持ちを新たに講義にのぞみます。
思い出したワインを、
ワイン名:Savenieres Clos de la Hutte サヴニエール・クロ・ド・ラ・ユット
生産者:Thibaud Boudignon ティボー・ブーディニョン
フランス・ロワール地方のシュナンブラン種の白ワインです。
まるでクリスタルのような研ぎ澄まされた白ワインです。でも、丹念に耕された畑は羽毛のようにふかふか。ブドウの声を聞きながら、自身の信じる仕事を厳格に突き詰めている人です。彼には、風と鳥の鳴き声以外、雑音など無い世界で仕事に向き合っている、その姿がワインに表れているのではないかと感じます。私の大好きな白ワインです。
Leadership is about how someone else experiences themselves in your presence.
自分はどちらかと言うと「待ち」意識が強いんですけど、積極的に他者を巻き込んでいくイメージをこの言葉から受け取り、響きました。今日も大事なメッセージありがとうございます!