おはようざいます。週末は有意義に過ごされましたか? 私は久しぶりの日本で、大好物のお菓子「雪の宿」やエクレアを食べながら、勉強に時間を割いていました。
きょう7日から、MITのMBA講義がいよいよオンラインで始まります。
8月には渡米も控えるなか、今どんな心の内かというと、けっこう焦っています。どうして? これから始まる新しい生活や学びが、楽しみじゃないの?と思われますよね。もちろん、ワクワクした気持ちもあります。ただ、世界各地から集まる同級生らと週末にやりとりをしたところ、みんな似たように恐れの感情が大きいようです。
今日のNewsletterでは、皆さんも同じように日常生活で無意識に抱いている一つの「恐れ」の深層心理について、一緒に考えたいと思います。
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あるリーディング課題を読んでいると、こんなキーワードに出合いました。
FOMO - “Fear of Missing Out”(見逃すことへの恐怖)
文脈はこうです。
MITに入学した学生たちは、新しい扉を開き、目の前にバラエティ豊か(広範囲・多方面)に広がる学内外での生活・活動がとっても魅力的に映る。そして、多くの学生は最初、一種の不安を感じるものだ。FOMO(見逃すことへの恐怖)――。自分の知らないどこかで、何かとても良い機会があり、それを逃しているのではないか、と。
例えるなら、ディズニーランドやUSJといった遊園地に一歩足を踏み入れた自分を想像してみてください。
目の前に壮大な世界が広がり、園内の地図を片手にワクワクしながら、同時に「わらわら」としてしまう。あの感情です。
一刻も早くあのアトラクションに乗ってしまわないと……。自分がシンデレラ城を歩いている間、別の場所では華やかなパレードが開かれているのではないだろうか……。そばでは、年間パスをさげて悠々と振る舞う常連客もいる……。ますます焦りますね。
先週の入学説明会で、MITのMBAプログラムのアドバイザーは、そんな学生たちの今の心境を見透かして、こう語りかけました。
MITは、キャンディストア。数え切れないほど魅力的な選択肢がある。
だから、君たちは自分でしっかり取捨選択のフィルターを持って来ないと、結果的に、あれこれ手を出しているうちに1年があっという間に過ぎてしまうよ。
「おいでおいで」とキャンディストアに誘われ、扉を開けて入店したら、「ぼく、ここで全部は持って帰れないからね。動き回る前に、自分が本当に欲しいキャンディをしっかり決めてから、売り場に行ってカゴに入れてね」。そんな助言でした。
同級生も私も、それぞれの目標や動機、計画があって「MITキャンディストア」の扉を叩いています。ただ、扉がいざ開くと、これまで想定していなかったイベントや講義、ネット-ワークの機会などに、目も心も揺さぶられるのです。ストアの閉店時間(卒業時期)は決まっており、買い物カゴの大きさにも限りがあることを知っています。分かっているからこそ、「方針を早く固めないと」と、余計に焦るのです。
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FOMOの感情は、私たちMITのMBA新入生に限った話ではありません。
スマホをついつい触って、SNSやメールをチェックしてしまう。自分が関心を寄せるニュースやサイトを頻繁に開いてしまう。なぜでしょう?
自分が知らない間に、何か楽しいことがあったのではないか
大きなニュースやイベントを見逃してしまってはいないか
他の人がやっている事と、いつもつながっていたい
こういう落ち着かないFOMO(見逃しの恐怖)を、誰もが持っているからです。
手元で調べると、マーケティングの研究者Dan Herman(ダン・ハーマン)氏が、1990年代に発見・確立した概念です。
ハーマン氏のウェブサイトにあるFOMOの説明によると、
可能な多くの選択肢がある
↓
(選択肢を)消費できるという自覚
↓
これから起こることへの想像力
↓
見逃すことへの恐怖
という風に感情が推移しているといいます。
そしてハーマン氏は、「私の調査によると、先進国の成人の約 70% が多かれ少なかれ FOMO を経験しています」と記しています。情報が洪水のようにあふれるネット全盛・SNS時代に、ますます傾向は強まっているでしょう。
対処法・処方箋はすぐには見当たりませんでしたが、まずはFOMOの概念を知ることで「見逃しの恐怖」との共存は始まりそうです。
私は、ハーマン氏がいう「先進国では……」というところに、一つのヒントを得ました。先進国や都会で生きる以上、見逃しや立ち遅れへの焦り・不安は、あって当然なのだと、まず受け入れるのです。
私も「MITキャンディストアとは、そういうところなのだ。いまの焦燥感は誰もが抱く、当たり前の感情なのだ」と知ることで、心が少し落ち着きました。
また、私はいま田舎で帰国からの自主隔離をしているのですが、都市部ほど選択肢がないので、「見逃しの恐怖」も心持ち低めです。田園風景をながめて、鳥のさえずりを聞きながら、これからどうしようかな、とゆっくり考えているところです。
何かに恐れ、焦りが先行する心の状態であれば、選択肢が両手いっぱいに増える場所で動き回る前に、情報の少ない場所に一時的にでも身を置くと良いかもしれませんね。
お疲れ様です。
FOMOめちゃくちゃあります!インプットしきれない程の有効と思われる情報が溢れる中、持っている知識のカゴが大きいという誤認をしており、そこに全部入れちゃったら何て素敵な私!とデキる自分を想像し、「全部見なければ」という意識を勝手に持って見逃す恐怖と脅迫心にかられています。結局、その理想の自分とやり切れていない現実との差にストレスを感じています。
どうしたらいいのかなと考えたのですが、その受動的な意識から、能動的に変わるしかないと思いました。例えば、情報をとる時間を種別で決めてしまうとか、見ないものを決めてしまう等、自分がコントロールしているという立場にたってみることで、追われるよりもパフォーマンスも上げられそうです。カゴの大きさと時間は有限であることを自覚する、諦めることが大事。
それにしても、キャンディストア見なくなりましたね、大人になってただ見えなくなっただけでしょうか?子供がキャンディストアで学ぶように、実はカゴが少し大きくなった大人こそ、キャンディストアでの学び直しが必要かもしれませんね。
https://youtu.be/ZD3r5jtLEPo
選択の科学にも似た話がありました。
資本主義/民主主義の原則は”選択肢がある”こと、我々も無意識に選択肢の増加=良いことと考える節があるが、果たして本当にそうか?科学的に解明してて面白かったです。