自らの言動への改善点を聞く「フィードバック」。相手が自分の成長のために言ってくれていると頭では分かっていても、なかなか素直に聞けません。なぜ? どうすればよいでしょう?
知り合いのスズキさん(仮名)が、こんなことを言いました。「価格設定で安売りは禁物。コストカットからイノベーションは生まれない。世の中の上中下(じょうちゅうげ)でみて、最低でも中、できれば上を相手に狙いましょう」
私はこれを聞いて、感想を返しました。「内輪の話でもギリギリどうかと思いますが、『世の中を上中下』という区分けは聞き捨てならないですね。Daigoの差別発言を思い出させる内容で、気をつけられた方が良いのでは」
スズキさんは、見るからにムッとした表情でこう言い返してきました。
「Daigoの発言とは別物です。一緒にしないでください」
その反応に触れた私もイライラ。年上でもあるスズキさんにそれ以上、何かフィードバックを返すのは控えました。
良かれと思ってしたフィードバックが、かえって摩擦やストレスを生んでしまう。
こんな経験、ありませんか?
スタンフォード大ビジネススクール講師でコーチングが専門のEd Batista氏が、HBR(Harvard Business Review)に寄稿した“Make Getting Feedback Less Stressful”を読んで、このカラクリがわかりました。
フィードバックは、アメリカでは「Gift」(贈り物)や「Breakfast for Champions」(王者の朝食)と呼ばれるそうです。自分の成長に欠かせない、貴重な存在、という位置づけでしょうか。
ただ、「フィードバックを受けるのは、本質的にストレスのかかる経験だ」という前提を頭に入れるべきだと、Ed氏はこの論文で強調しています。
フィードバックとは本来、耳が痛い。
聞いた瞬間に、
誤った判断をされている
自分の心や信念が脅かされている
このように、物理的な安全を脅かされたのと同じように人間は感じます。
相手を「上から目線」だと捉え、「自分の真意もよくわからずに言ってきているな」と感じやすい構図に、フィードバックそのものがあるのです。親しい間柄でも、フィードバックを受ける際は相手が上に立ったように映るものです。
こうした感情のスイッチは厄介です。
ストレスが感情フィルターを作動させると、学習プロセスが停止する
(神経科医のJudy Willis氏)
うまくコントロールしたいです。
では、どうすればよいか?
相手は必ずしも高い地位にいて、それを誇示したいわけでもない。あなたの改善を助けるために言っているのだと理解する
フィードバックを受けるのはプレッシャーがかかることで、主体的に耐える心を持つ
間違った推測を言われているなと感じたら、自分の真意とどう違うかを伝える
こうした準備があるだけで、次回のフィードバック。受け入れ方が違ってきそうな気がしませんか?
ただ、なお、すべてを受け入れはできず、拒絶したくなるときがあります。
そういう時のお勧めは、感情を整理する時間を設けることです。フィードバックをじっくり振り返る。間を開けて頭を冷ますのが、やはり有効だとEd氏は助言します。
スズキさんからは後になって、「言いにくいことを言われるのはぜひ続けて下さい。私はそんなに人間が小さくないので、怒ってはいませんよ」と言われました。私は兄貴分のように実は慕っているスズキさんの懐の深さを感じました。
フィードバックから互いに時間を置いたからこその、誤解の雪解けかもしれません。
お疲れ様です。
フィードバックは「ギフト」。私にも、最近そう思える出来事がありました。
先日大学院のリーダーシップの課題で、上司・同僚、部下・後輩の各数名に360度評価をお願いしました。結果を見たときに、点数の低いものには当然ショックを受けました。こんな風に自分のことを見ていたのかと若干不信感をも抱きました。でも、講義を受け、グループワークで語り合ううちに、時間が解決してくれたのでしょう。仕事でもない私の課題に10分ちょっと付き合って頂いたこと、コメントまで頂いたこと自体が、有難いなと思えたのです。そうすると不思議と、点数が低いものは、これからの私に対する「期待」と受け取れるようになりました。加えて、自分では意識していなかった強みも教えてくれて、これはギフト以外の何ものでもないと思ったのです。周りと自分自身との関係を、冷静に捉えることの出来る良い機会となりました。
それでも人間が出来ていないので、カチン!とは常日頃くるのですが、フィードバックをもらったときは、一旦「ありがとう」と心のなかで頭を下げ、教えの通り時間をおくこととします。
さて、更なる悩みは、フィードバックをする立場として、相手のネガティヴな反応がわかっていながら、それでもフィードバックをしてあげられるか。いま心がけているのは、以前のがさんにアドバイスいただいた「Side by side」です。謙虚に寄り添う気持ちが少しでも伝われば、上から目線と感じる問題も少しだけ和らぐような気がします。
ご無沙汰してます!お元気そう?で何よりです!
フィードバックは年上の方から言われるのは何ともないですが、年下から言われるのは少し苦手意識がありました。変なプライドとかが邪魔してたんだと思います。最近は相手と目線を合わせることで、落ち着いて受けることができるようになったと思います。意識してやらないとなかなか対応できないですね、私みたいに体育会系で上下関係バリバリ厳しい環境で生きてきた人間は(笑)
一方で、フィードバックをしてあげる側も言葉を選ぶ必要があるかなと思ってます。フィードバックが贈り物や、王者の朝食と言われるのであれば、フィードバックをしてあげる側もそのギフトを丁寧に扱う必要があるのかなと思いました。